新領域合格体験記 ~Claude Code を使って4日間の対策で院試に合格した話~

TL;DR

  • 東大院 新領域 メディカル情報生命専攻 に合格しました。
  • 筆記試験の対策は Claude Code を使って行いました。
  • 結果的には4日間の対策で合格することができました。
  • 解ける問題が出たから受かっただけの運ガキです。良い子は真似しないように!
  • 院試対策は早ければ早いほど良いです。

院試までの道のり

なぜ、院試対策をする時間がそんなに取れなかったのか。 それは一重に私の逃げ癖によるものなのですが、時系列順に見ていきたいと思います。

私の経過について詳細に語るため、かなり長くなっています。Claude Code の話が見たい人は読み飛ばしてください。

2026年2月

3年Aセメスターの実験課題をなんとか提出することに成功し、進級の権利を手に入れました。 前年はメンタルの不調により、進級することができなかったので、自分にとっては大きな山場でした。 この年も例に漏れずメンタルの調子を崩したのですが、先生に分からない部分を聞いたり、学生支援室を利用したりしてなんとか乗り越えました。

2月末、研究室説明会がありました。 4年生になって所属することになる研究室を選ぶためのものです。 私は、この時点で柏キャンパスに行くことが濃厚になりました。 私のやりたい情報系の研究室は柏に寄っていたからです。

理学部 生物情報科学科は一番新しい学科で、半分の研究室が東大院新領域に属しているという特殊な学科なのです。 新領域は千葉県の柏にキャンパスを構える学部を持たない独立した大学院で、基本的に院生しかいません。 学部生で柏キャンパスに通うなんていうのは、生情の学生くらいなものではないでしょうか。

研究室選びはなんとなく目を背け続けてきた現実でした。 興味関心からすると柏行きになるが、快適な東京の寮から出たくない。 しかし、決断のときが来ました。 私は、春休みを利用して柏に引っ越すことを決意します。

理由は単純で、片道90分程度かかる研究室に通うとなると、研究室に行けなくなり卒業ができなくなると考えたからです。 先ほどメンタルの不調について少し触れましたが、私はメンタルが不調になると抑うつ症状が出て、朝起きられなくなったり外出自体が難しくなったりします。 とにかく、研究室に行くまでのハードルを下げて、昼過ぎに起きたとしてもふらっと立ち寄れる環境を作る必要がありました。 さもないと、どうせ今から行ってもなぁとなったり、遠すぎて行くまでの決心がつかなくなったりします。 5年間お世話になった2食付きの寮を出て一人暮らしを始めるのは勇気が必要でしたが、登校の可否には変えられませんでした。

2026年3月

不動産仲介業者に依頼し、急いで物件を探しました。 幸い、大学から自転車で十数分の物件に入居することができました。 柏キャンパスは最寄りの柏の葉キャンパス駅からも遠く、駅とキャンパスをつなぐバスが通っているほどです。 駅と大学の中間に構えることでどっちにも近く、どっちにも遠いという状況になってしまいましたが、キャンパスの立地と交通の便が悪いので、こればかりは仕方ないですね。 大学にすぐアクセスできるようになったので、当初の目的はクリアしました。

しかし、環境が変わったこと、寮食がなくなって自分で用意しなければならなくなったことによって、メンタルの調子を崩してしまいます。 ご飯を食べるためには外に出ないといけない -> 外に出る気力がない -> 飯抜きで更に心身が消耗 -> ご飯を食べに外に出られない -> … という負のループに陥っていました。

2026年4月

4月から4年Sセメスターが始まりました。 生情では、4, 5月を使って3か所の研究室をまわって、研究室の体験をする「研究室ローテーション」があります。 1番最初に行ったのが第一志望の研究室だったのですが、かなりメンタルの調子が悪かったので週に1回のセミナーにかろうじて出席するという状態でした。 なんとか自分の発表を乗り越えて1つ目の研究室のローテが終わりました。

4月末に、このメンタル不調の転機が訪れます。 柏保健センターの医師に、「アリピプラゾール」という薬を処方してもらいました。 ドーパミン過剰なときは抑え不足しているときは補うという薬です。 ここから、私の様子が180度変わっていきます。

2026年5月

薬は劇的に効きました。 これまで億劫だった外出が平気になり、ご飯も食べられるようになりました。 それまで過眠気味で一度寝たら起きられない体質だったものが、3時間程度で目が覚めてしまう不眠状態に陥ってしまいました。 また、性欲亢進の症状も出て、Hなことを常に考えて止まらないようになりました。

これらの副作用は、先生に相談して別の薬で抑えるようにしてマシにはなりました。 これを書いている今も副作用に悩まされてはいますけどね。 活動自体ができなくなるよりは良いという選択ですね。

5月末には研究室の希望を事務に提出し、内定を得ます。 生情の特殊なところは、完全に学生の話し合いで研究室を決定することです。 普通は GPA 順となるところが多いと思いますが、うちではそんなルールはありません。 最終的にどうしても譲れなくなった場合は GPA が客観的な決着手法になると思われますが、その前にがんと譲らずここしか行かないと固辞することで迷っている人が譲ってくれるというハックがあると先輩に聞きました。 話し合いという決定方法も考えものだなぁと思いつつ、私の志望の研究室にローテで参加している人はいなかったので、自分の希望については心配してませんでした。 幸い、話し合いは拗れることがなく自然に分散する形で全員の希望が決まりました。

ここで、研究室ローテが一段落し、やっと次のことが視野に入るようになりました。 新領域の入試の出願期間は、6/4 ~ 6/10 です。 それまでに、英語の外部試験を受験してスコアを提出しなければなりません。 一応 TOEIC L&R の勉強はしていたのですが、気づいたときには出願に間に合う試験の予約期間を過ぎていました。 仕方がないので TOEFL iBT を受験することにしました。 英語が苦手な私にとって、Speaking と Writing まで課される試験で点数が取れるわけがありませんでした。 おまけに、直前に予約を入れたせいで空いている会場がなく、千葉から八王子まで片道2時間以上かけて受験しに行くはめになり、散々でした。

英語の外部試験は計画的に早めに受験しておくようにしましょう!

2026年6月

いよいよ研究室配属です。 そんなことより、院試の出願の用意をしなければなりません。 研究のいろはも分からないうちから、なんとか絞りだして「研究計画書」を提出する必要があります。 研究室の先生は直属の指導教員であると同時に、院試の採点官であるという微妙な関係になります。 出願前に志望研究先の先生と話しておく必要があるのですが、研究計画書を直接添削してもらうことはできず、 出願後は院試について話すことができなくなります。 なんとか捻り出した研究計画書を書いて出願することができました。

研究室のアポと研究計画も余裕をもって作成しておきましょう!

ここから、私のアルバイトが忙しくなります。 認証 API サーバーを新しく作れとのことで、AI を使いつつ起きている時間はひたすら開発するというような日々が続きました。 ここで多くの AI のノウハウを吸収しました。 私自身楽しんで取り組んでいた部分はあったのですが、余りにのめりこみ過ぎており、 会社とも話して、7月からは院試勉強に集中するために抜けるという約束をしていました。

2026年7月上旬

研究室としても研究活動は休んで7月は院試勉強に充てて良いと言われました。 ここで100%院試に切り替えれば良かったのですが、「やらされる勉強」と自分の中で位置づけられていたため、院試勉強はなんとなく取り組みたくないものとして、やらない理由を探している状態でした。 精神科の先生からは、やりたくないものに100%取り組もうとすると、何も進捗が生まれずに病んでいくのではないかと指摘され、少なからずバイトを続けることにしました。

7月は Anthropic が Fable 5 を復活させましたが、そこから従量課金に「移行する移行する詐欺」を続けたために、駆け込みで使い切らなきゃという意識のもとバイトに注力してしまいました。 また、このあたりから「Rust」の勉強にハマってしまい、院試勉強をやらないといけないことは分かっていつつも、常に逃げ回っている状態でした。

2026年7月下旬

ここからはさらに細かく日程を追っていきます。

筆記試験は 8/4 です。もう2週間しかない!流石にやばい!ということで、遂に院試勉強に手をつけるはずでした。 アルバイトは 7/21 が最終出勤のつもりだったのですが、7/22 に AI に詳しいエンジニアが話をしに来てくれるということで、7/22 も出勤しました。 その日、社長から急ぎで案件をやってほしいと言われました。(本当になぜ今なのか?)しかし、その部分は私が鍵を握っていたため、代替が効きません。 ここからひたすら開発を進めることになるのですが、なかなか上手くいかないドツボにハマってしまい、結局引き継ぎができて自分の手を離れたのは 7/28 のことでした。 結局引き継がれた後、止まったままな気がするんですけど。なんなんでしょうね?

怒涛の開発で疲れたので 7/29 はひたすら眠っていたような気がします。

7/30 には、履修している授業のレポート課題を取り組む必要がありました。 私はいつもギリギリに出すのが常ですが、7/31 が締め切りの課題に対し院試勉強の焦燥感により、7/30 中に終わらせることができました。

さぁ邪魔するものは何もなくなりました。7/31, 8/1, 8/2, 8/3 の4日間の院試対策の始まりです。

Claude Code による院試対策

メディカル情報生命専攻では、過去問(に加えて近年では出題意図)が公開されています。 まずは、Claude Code にそれを全部読み込ませ、傾向分析、4日間の勉強のロードマップ、解答解説を作らせます。 すると、近年では出題傾向がかなり固まっていることが分かりました。

11問から3問選んで解答します。 第1問が小問集合、第2問から第6問が生物系の問題、第7問から第11問が情報系の問題と固まっていました。 私は生物系が弱いので初めから捨てていました。 小問集合はすばやく高得点が狙えるため、小問集合をさっと処理して全力で情報系から2題を解くという戦略に決まりました。 情報系の問題の分野も、次のように固定されていました。

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線形代数グラフ理論アルゴリズム確率統計動的計画法

ここで、先ほどの薬の副作用、不眠が効いてきます。 睡眠薬を飲まなければひたすら勉強ができる!ということで、実際に問題を解いて、答え合わせをし、解説を読んで理解し、自分の手で解答を作ります。 ひたすら、問題を解きまくります。

このとき、自分の手で解答を実際に書くというのが重要です。 普段タイプしかしないと、文字が書けなくなっています。 また、ただ解説を読むだけでは分かった気になるだけで、もう一度同じ問題が出ても、「見た記憶はあるけどなぁ」で終わってしまいます。 自分の手で必ず見ずに再現できるようにしておくことが重要でした。 更に、疑問に思ったことは Claude Code と対話して解決します。 自分が気になった点についてすぐに深掘りできるのが AI の良いところです。 また、アルゴリズムを書かせる問題が必ず出るので、疑似コードを書く練習をしておくと良いです。

7/31, 8/1 を問題を解きまくるのに使い、睡眠時間も削ったので、頭が限界を迎えてきていました。 ただ眠るのはもったいないので、ここで暗記科目を頭に入れます。 小問集合は半分が生物系で構成されており範囲も大体決まっています。 また、情報系でも意外と知らない盲点みたいな部分もあるので、周辺知識を固めておきます。 ここで参照する暗記 book も Claude Code に作らせています。 時間はあるからしっかり作ってと言ったら、それぞれ70ページくらいの暗記 book を出力してきたので、流し読みをしながら頭に情報を詰め込みます。 2時間位かけて詰め込んでいると本当の限界になるので、ようやく寝ます。 8/2 は何回も起きて暗記を詰め込んだり(不眠なので目が覚めてしまいます)、残りの情報系をカバーしたりしました。

8/3 は今までの復習をしつつ、体調をしっかりと整えていきます。 結局、過去5年の情報系の問題を一通り解くというところまでしか辿り着けませんでした。 また、夕方に前日だというのにバイトの面接を入れられていたので、それもこなしつつ社員からエールをもらって寝ました。

筆記試験本番

いよいよ本番です。 余裕をもって起きて、大学に向かいます。 まだまだやっていないとこたくさんあるのに、と思いつつもうどうしようもありません。 直前まで総復習を行って備えます。 なぜか、シャー芯を机に置くことが禁止されているので、芯の補充も確認しておきます。 この時点の情報系の手ごたえとしては、線形代数は難しい(固有値以降あまり理解してない)、グラフ理論は取り組みやすい、アルゴリズムはテーマによって難易度が変わる、確率統計は背景さえ知っていれば計算問題も多い、動的計画法はなんとなく嫌、という感じでした。

試験が始まったら、まずは小問集合を軽く倒します。 生物系が難しく感じましたが、悩んで分かるものでもないので、さっさと次に行きます。

さぁ、いよいよ情報系2題です。 ここで、ボーダーが分からない、選択式どの問題も同配点というのが嫌らしく感じます。 難しい問題を選んだ場合、その問題を選んだ受験生の中で相対的に出来が良くても、絶対得点が低ければ簡単な問題を選んだ受験生に負けてしまいます。 更に、自分ですら AI を利用して効率的に勉強しているのだから、他の受験生のレベルも上がっており、ボーダーが上がっていると考えるべきです。 その結果、簡単な問題を選んで完答近くの出来をしなければ危ういと考えていました。 そのため、最初の問題が解けるのは前提として、最後まで解ききれるかを見ていました。

線形代数は疎な5次の行列でした。実際に書いてみましたが、5次行列を性質を上手く使って高速に処理することが求められており、最後の証明もできなそうでした。 グラフ理論は、ド ブラン グラフをテーマにした問題でしたが、(1)の例示以外は普通のグラフ一般の問題でした。(2), (3)は BFS で解けるが、(4) が少し状況が複雑で見えませんでした。 アルゴリズムはインプレースな整列問題でした。(1), (2) しかなく、(2)の誘導が(1)にも使えるため、完答できる問題でした。 確率統計はカイ2乗分布でした。これこそ、見たことあるけど手が動かない問題でした。ここまでの4問を判定するのに時間を使ってしまい、動的計画法の問題は読む時間がありませんでした。分量が多く、ちょっと面倒そうでした。

結局、アルゴリズムの問題を完答し、グラフ理論の問題を途中まで解き切ることを選択しました。 これって、普段競技プログラミングで取り組んでいることだけど、院試勉強しなくてもできた問題やんけ! 短期間ながら勉強したことを活かし切れず、空回りしたような気持ちでしたが、解答の出来には少し自信がありました。

2次合格発表

試験が終わってからは、早く家に帰って AtCoder Heuristic Contest に取り組んでいました。 ちょうど長期コンテストの開催期間だったのです。 やっとしがらみが消えて取り組めると熱中していました。 また、一人で合格発表を見るのが怖いので、友達を家に招き入れていました。 友達に AHC を布教し、面白そうだねと言ってもらうなどして寝ました。

2次の合格発表は試験終了から丁度24時間後の 8/5 12:00 です。 どうしてこんな過密スケジュールなのか、意味が分かりません。 採点するの大変だろうに。 とにかく、その友達と一緒に受験番号があるかどうか確認しました。 無事、合格していました。

合格が決まった後、家族や友人に連絡をし、その後もひたすら AHC をやっていました。 3次口述試験は翌日だというのに、急ぎで作った研究計画書について絶対突っ込まれると分かっていました。 その後ろめたさから逃げるように、ずっと AHC に逃げていました。 熱中できるのは良いところですが、やらなければならない本筋から逃げてしまうのは良くない癖ですね。

日付が変わるころ、ようやく口述試験の対策に乗り出します。 ここでも Claude Code に想定の質問と解答を考えさせます。 特に研究計画書の核心については、何度も確認し、きっちり対策をしました。 2時か3時くらいに眠りにつきました。

口述試験

起きたのは10時過ぎでしたが、それでも間に合います。引っ越した恩恵がここでも活きてきます。良かったこの距離で。 試験番号が20番ごとに30分の予定時間が割り当てられており、下手したら5分もないんじゃないかと思っていましたが、会場についてその予想は外れます。 会場についても、まだ前の前の組が座っており、面接時間はかなり押していました。

想定回答を暗唱しつつひたすら待ちます。 もはや、早く終わってほしい。 嫌な待ち時間です。 ようやく、自分の番が回ってきました。

部屋に入ると、椅子の前にマイクがあり、メディカル情報生命専攻の先生がずらーっと並んでいます。 下手な動きも憚られる雰囲気です。

最初に研究室ローテのテーマについて尋ねられたときはかなり動揺しました。 想定していませんでしたし、あのときは体調が悪くよく取り組めたものだと思っていなかったので。

研究計画書の質問も対策通りに済ませ、最後に意気込みを聞かれました。 これも予想外でしたが、自分の率直な気持ちを話しました。 夢中になると寝食を忘れて取り組むタイプであるから、熱中して頑張りたい、というようなことを言ったと思います。 睡眠時間は取ってくださいと返され、ちょっと笑いが起きました。

その翌日に3次の合格発表が出ましたが、無事合格していました。 感謝するぜ、お前と出会えた、これまでの全てに。

まとめ

  • 逃げ癖から対策を後回しにした結果、4日しか院試勉強の時間を取れなかった。
  • 試験では、たまたま自分に解ける問題が出て解けたので受かった。
  • この合格体験は全く再現性がない。むしろ教訓だらけである。
  • 院試対策は早ければ早いほど良い。
  • これからの時代、AI で対策は当たり前になる。ボーダーが上がり、より苛烈な競争が引き起こされるだろう。
  • 苛烈な競争に打ち勝つためにも、とにかく早く院試対策に取り組んでほしい。